坂口安吾さんのお話を凜野ミキさんが漫画で描いた本です。文学部卒の友人が、坂口安吾さんを卒論テーマにしてたよーな。読んでみました。
一冊に二篇、サクサク読めてお買い得な本でした。どちらのお話にもお綺麗だけれど脳内はクレイジーな女性と、彼女に翻弄される男主人公が出てきます。
『桜の森の満開の下』の男主人公は山賊でした。襲った人の金品やら妻を奪ったりしているうちに問題の女に出会います。
女はすんごい我が儘です、しかも男にすんごいグロい要求をします。女よりも前から男と暮らしていた女はいきなり殺すように命じるし、男が生活のために強盗に出掛ける家とか指定してみたり。
で、殺した人間の首を持ち帰らせて、首を使って“ごっこ遊び”をしちゃいます。キャストが足りなければ新しい首をおねだりです。
話は変わりますが、お花見って行きますか?
満開の桜の木の下でお酒とか呑んで自我を開放するイベント?ですよね。
京での暮らしを通じてお互いが生きて行く上で必要不可欠であることを確認した二人が山に戻ろうと、桜の森を通ったとき…。
何かが起こります。
『夜長姫と耳男』
耳男は若い仏師です、耳がエルフみたいに上方向に長いのでこのよーに呼ばれています。
夜長姫は貴族の娘、彼女の父親が耳男に仕事を依頼することで出会います。
夜長姫の冷酷かつ無邪気な笑顔に触発されて、耳男は依頼された仏像とは違う、馬の顔をした像を彫って呪いをかけます。
この呪いの像が夜長姫に大ウケ!疫病を退ける力があるとして信仰の対象になっちゃったり。
耳男は次に夜長姫の笑顔を摸した弥勒菩薩像を造ろうとするのですが、こちらは製作過程から不評だったり。
夜長姫の異常性がエスカレートしてきます。疫病で野垂れ死にする人を観察して喜んだりします。
耳男は恐くなって、夜長姫を殺害するのですが、その遺言がまた怖いです。
山賊の妻も夜長姫も、鬼とか妖怪とかではなくて“人権”という概念のない人間に過ぎないんですね。大切な事を知らないだけの人間。
特別な存在ではなくて、案外普通に誰しも持っている冷酷な人格を体現しているだけなんです。
愛する対象にいかに真摯に向き合えるのか?
男女であっても、
芸術家とモデルであっても。
クレイジーな女を愛する男もまたクレイジーなのかしら。
面白い、久しぶりに印章に残りそうな作品に出会いましたよ♪

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